生物顕微鏡の各部の名称や操作方法の説明をします。
◆接眼レンズ(アイピース)
顕微鏡の上部にあり 眼でのぞくためのレンズを接眼レンズといいます。上の写真のような双眼式の顕微鏡の場合、同じ接眼レンズを2つ用います。接眼レンズの種類には、次のようなものがあります。
・広視野タイプ(Wide Field)・・・「WF」と表記されます。
・超広視野タイプ(Super Wide Field)・・・「SWF」と表記されます。
また、接眼レンズの重要な特性として、倍率があります。 10X(10倍)、20X(20倍)のように表記されます。
「WF10X」と表記された接眼レンズは、「広視野タイプ、10倍」の接眼レンズであることを示します。一般的な高性能接眼レンズです。誠報堂科学館が販売する顕微鏡の多くは、このWFタイプの接眼レンズを使用しています。
こちらの接眼レンズは、もうちょっと高級なもので、「WF10X/22」そしてその横に眼鏡のマークが刻印されています。この意味は、「広視野タイプ10倍の接眼レンズで、視野数22mmのレンズ。アイポイントが長く眼鏡でをかけていても観察しやすいレンズ。」であることを示します。視野数の数字が大きいほどより広い範囲を観察できるのですが、詳しくはこちら(日本顕微鏡工業会のページ)のホームページをご参照ください。
◆視度調節環
ここを回転させることで、左右の眼の視力が異なる方でも、両目できっちりピントを合わせることができます。
◆ヘッド部
プリズムが格納されており、対物レンズからの光を左右2つに分割するとともに45度の角度に傾けて、接眼レンズに導きます。このヘッド部は360度回転して好きな方向から観察することができます。また、2つの接眼部の間隔は、スライド式で観察者の眼幅に合わせることが出来ます。
◆レボルバー
対物レンズを保持する回転式の治具です。観察の際、このレボルバーを回すと、対物レンズを切り替えることが出来ます。
◆対物レンズ
顕微鏡の性能を決めるともいえる重要な部品が対物レンズです。レボルバーにねじ込んで装着して使います。対物レンズには多くの特性があります。
・種類:
左の写真でPlanと表記されているのが対物レンズの種類を表します。対物レンズには次のような種類があります。
Achまたは無記載(アクロマート):一般的な対物レンズです。色収差をはじめ各収差を補正した高性能レンズです。
Plan(プラン・アクロマート):高級対物レンズです。各収差をアクロマートよりも高度に補正しています。
PlamFl(プラン・フルオリート):さらに高級な対物レンズです。Planよりも高性能です。
PlanApo(プラン・アポクロマート):最も優れた対物レンズです。
一般的には、アクロマートまたはPlanが使われます。PlanFl,PlanApoは大学や研究機関で使われる高級品です。
なお、低価格な顕微鏡には、色収差補正のされていない対物レンズが使用されている場合があります。収差の影響は高倍率ほど大きいのですが、このようなレンズは低倍率であっても観察するに堪えないものになってしまいます。顕微鏡をお求めになる際は、対物レンズは是非ともアクロマート以上のものをお選びになることをお勧めします。(当店で販売している顕微鏡はすべてアクロマート以上の対物レンズを使用しています。)
・倍率:
対物レンズにも、接眼レンズと同様に「40X」(40倍)のような表記がされています。 通常使われるのは、4X~100X程度です。倍率に応じてカラーリング表示されています。
接眼レンズと組み合わせて顕微鏡としての倍率が決まります。
例えば、対物レンズが40倍で、接眼レンズが10倍のとき、その顕微鏡の倍率は、40倍X10倍=400倍 ということになります。
・開口数:
こちらも重要な特性で、レンズの明るさ、分解能の指標となります。数字が大きいのもが、視野が明るく、細かいものまできれいに見えることを示します。対物レンズへの表記は、「倍率/開口数」、具体的には、「60X / 1.35」のように刻印されており、この対物レンズは「60倍/開口数1.35」であることを示しています。
・機械的鏡筒長:
対物レンズと接眼レンズの間隔を「機械的鏡筒長」といい、160㎜が標準です。
・カバーグラス厚み:
使用するカバーグラスの厚みを示します。通常は0.17(標本用)が使われています。
・液浸:
液浸タイプの対物レンズであることを示します。カラーリング表示により使用する液のタイプ(上の写真は oilを使用)を示しています。
※対物レンズに関する詳しい説明は、こちらのサイト(日本顕微鏡工業会のページ)をご参照ください。
◆メカニカルステージ
メカニカルステージは、観察する試料をのせたスライドグラスを、XY方向に精密に動かすための微動装置です。特に高倍率での観察には必須ともいえるものです。
◆コンデンサ・絞り
コンデンサは、照明の光を試料に導くためのレンズです。コンデンサの種類や絞りの調整により、顕微鏡を通じた試料の見え方は大きく変わります。コンデンサの使い方は別途解説する予定です。
◆合焦装置(粗銅・微動)
顕微鏡の左右にある合焦ノブを回すことでピントを合わせます。顕微鏡のピントの合う範囲は狭いので、微動装置があればグッとピント合わせが楽になり、観察しやすくなります。
◆照明装置
顕微鏡の下から観察試料に照射する光源です。タングステンランプ(白熱灯)、ハロゲンランプ、蛍光灯、LEDなどが光源として用いられます。